ゆずの花 葉や枝にうもれて目立たず咲く、かれんな白い花。
つよい香りを畑いっぱいに放つわけでもなく、5月のある日さっと咲いて散っていく。
その後に小さな青い実を残して。
ゆずの花 葉や枝にうもれて目立たず咲く、かれんな白い花。
つよい香りを畑いっぱいに放つわけでもなく、5月のある日さっと咲いて散っていく。
その後に小さな青い実を残して。
「ゆずの花を採取させてほしい。」そんな要望が入ってきたのが1995年頃のこと。
農協に日々沢山入る要望や声の中で、花が欲しいというのは初めてでした。話の先は当時の村長の同級生。香料会社でゆずの花の研究をしていて花を欲しがっているという内容でした。
「面白い話やね、協力しようか。」
花の咲き誇る5月、香料会社の社員4~5人がやって来て、こちらも4~5人で協力し、1個1個花をとる作業を手伝いました。
最初は花をとるだけで、なかなか次に発展する話はありませんでしたが、花の物語のはじまりの一歩となりました。
ゆずの果実の精油は世界で評価され、価格も高く、国内の関心ある香料メーカーが原料の争奪戦をしています。しかし、花の精油は違います。誰も手にしたことはないし、香りも知りません。花の時期、畑に漂う淡~い可憐な香り。この悩ましい答えがいつ解決できるのか。
これから13年の時を費やすことになります。
アロマテラピーやハーブの影響もあってか、2010年代は香りブームでした。檜の精油を採っているとか、土佐文旦の精油を採ったとか、新しい香りを求めて様々な動きの情報が入ってきました。
「ゆずの花の香り、自分たちでとってみようか?」
ゆずの花の香りをかぎそびれてから13年の空白期間に、馬路村農協は自ら化粧品製造を始めていました。そのベースにあるのはゆずの種。種からしぼるオイルや抽出するエキスを主原料とし、香りには果皮の精油が生かされ、これぞゆずのスキンケアと思える開発を行ってきました。
ここに、未知の香りである花の香りのスキンケアを加えたい!
組合長の号令を受け、沢村正義先生の指導によるプロジェクトが動き始めました。
ついに始まった、ゆずの花の精油プロジェクト。
1年目はゆずの花をとるところからです。
「テスト採取でどれだけとれるか?」「とるのはたやすいか?」「選別しないといけないか?」「1キロからどれくらい抽出できるか?」まずは、簡単な事をやってみて、可能性を探る研究から始めました。
まずは花を集めるのですが、驚いたのが花1kgの量。なんと70リットルのビニール袋に満杯に詰めたくらいの量で、花の数にすると何千個!これを1個ずつ木から採取する手間を考えると気が遠くなりますが、それでも精油抽出するには少ない量。
なんと花70リットルで、わずか0.001gの精油しか取れないのです。
何千個ものゆずの花を誰が採取するのか。やはり生産農家に頼って買い上げるしかありませんが、花をとったら実が成らなくなるのでは?と、問題も出てきます。
「買い上げる花の価格次第じゃないか?」、「1本の木に何万個も咲く木もあるし大丈夫」と、ひとつずつ答えを出していきましたが、価格を考える段階になるとなかなか答えは出ません。
それならと実際どれだけの手間がかかるかを、女性オペレーター6~7人に手伝ってもらい、花の採取と選別作業を2つのパターンで試してみました。
パターン①木をゆすって一気にとる。
早いが葉や枝なども多く入り選別時間がかかりすぎ、鮮度が落ち品質が悪化。
パターン②農家が丁寧に採取する。
選別の手間がかからない。鮮度も落ちない。
やはり、問題解決は現場にありました。ゆず農家さんに頼むのが一番良いと。
では、いくら出せば喜んで採取してくれるか、価格が重要に。安すぎると採取する人がいなくなるし、高いと製品価格が高くなる・・・。
「う~~~ん、1kg当たりいくらで買い取ろうか?」
役員会や生産者への説明会を経て、ゆず農家さんによる花の採取は始まりました。
ところで先ほどの女性オペレーターたち。
慣れない作業にキャーキャーと大騒ぎしていましたが、いつもと違う作業も楽しかったようです。効率が良いやら悪いやら・・・。しかしたまにはこういうのも良いのかも知れません。
で、花の香りの話。
採れましたよ!花70リットルでわずか0.001gしかとれない精油。
どんな香りかって?
人が今まで接したことのない香り。
他のかんきつとは全く別ものの香りでした。
化粧品に使用する時は、1滴入れればタンク全体に広がるくらいに濃く、ほんの少し使うだけです。
それほどに、ゆずの花の精油は濃縮したような濃い香りです。
本物の花は淡く、ほんのりと甘い香り。
毎年5月20日頃に花が咲きますので、興味のある方は、畑に入ってかいでみてください。
ゆずの花の精油は、umajiスキンケアゆずの花シリーズの化粧水とクリームや、ゆずの花ハンドクリームにも使われています。
終